夏休み映画の感想



1999/08/10(火)


まず、サイモン・バーチから...
いえ、嘘です。さすがにもういいです。









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『アイズ・ワイド・シャット』
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大きすぎる期待はしばしば裏切られるものだ。
これはもう必然的にそうなる。
しかし、今度は違った。素晴しいできだった。
期待は全く裏切られなかった。

とうとう、この監督はひとつとして、つまらない映画は作らなかったんだ
な。そう思うと感慨深い。
いくら本数が少ないとは言えたいしたものである。どんな名監督でもだい
たい何本かは首をひねる作品があるものだ。それに年をとるとおとろえが
感じられることも多い。でもこの監督にそれはなかった。
まあ、本数が少ないことこそが駄作を作らない秘訣かもしれない。
しかし、やはり並みはずれた力量がなければ、できることではあるまい。


キューブリックの言葉というものは多分あまり残っていないと思うが、
まだ映画監督としてのキャリアを始める前のことをふりかえって
「過去の名作と言われる映画の数々を観ることはたいへん励みになった。
 どう考えても自分にはこれよりましなものが作れるだろうと自信がつ
 いたからだ」
と言ってたのが面白かった(死亡したときの記事で読んだ記憶で書いてい
るのでちょっと正確ではないかも知れませんが)
ひどい毒舌だけどその後に彼がやったことを考えれば十分納得できる。


キューブリックの映画は隅々にこだわりや仕掛けがあるのでそういうのを
観るのも楽しいのだがこの映画では何よりもストーリーの展開そのものに
引き付けられた。 あんな話だったとは全然知らなかった。
どないなるんだろうと観ているうちに、あっという間に終わってしまった
かんじだ。こんなに没頭して映画を観たのも久しぶりだ。
それに笑わしてくれる場面(と仕掛け)も多かった。キューブリックの
映画でこんなに笑えるとは思わなかった。

私はトム・クルーズが嫌いなので、かなり不安があったがこの映画に関し
ては全然、問題はなかった。話によると90テイクもやらされたカットも
あるらしい。
90テイク...... まあ、あの監督のもとで90テイクもやったんじゃさ
すがに問題はなくなるんでしょうね。ということで今後はトム・クルーズ
も安心して観られるとは思わないが。


何よりも事前にどんな映画かという予備知識を持たずに観たのが良かった。
これもキューブリックの徹底した秘密主義と内容の見当がつかない、あの
予告編のおかげかもしれない。そういうのは結局、観客に対する親切だっ
たのだという気がする。
あるいは「映画というのは予備知識など持たずに観るべきものだ」という
のが監督の哲学なのかもしれない。

最近は予告編を始めとして映画の事前の情報が多すぎる。下手したら一度
ダイジェスト版で観た映画を観直している様なかんじになってしまう。
この映画にしても公開後は雑誌に内容が紹介されてしまった。そういう情
報は見ないように気をつけたがせっかくの監督の努力を無にするものでは
なかろうか。

この映画のできが素晴しいので、せめてあと一作、作っていって欲しかっ
たとも思うけど(『A.I.』とか『ホロコースト』とか企画はあったら
しい)これで有終の美を飾ったということで良かったのかもしれない。
ビートルズだって『アビー・ロード』で終わったからこそ良かったんだろ
う。多分。あんなの聴かされると「あと、ひとつでいいから作って欲しか
った」と思ってしまうけど。


それにしても本当にR−18指定が必要だったのだろうか。
たしかに、きわどい場面はあるが全体に対してはほんのわずかである。
その場面にしても決して下品なわけではない(と私は思う)
そもそも、あれをみせることにどんな問題があるのだ。
週刊誌にもヌードが氾濫している時代にいまさら。
「下品言うやつが下品や」と言いたい。

最近はレンタル・ビデオが普及しているから、中学生くらいでもキューブ
リックのファンはたくさんいることと思う。彼等にとっては人生でただ一
度の

「キューブリックの作品を新作の封切りとして観る」

機会である。

その機会を奪う権利が一体誰にあるというのだ。
(私にしても「フル・メタル・ジャケット」以来2回目に過ぎない)

なんとかガッツをだして映画館にもぐりこんでくれることを願う。









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『スター・ウォーズ エピソード1』
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これは残念ながら期待はずれだった(まあ、色々異論はあるでしょうが)
それ程の期待はしていなかったのだがそれでもちょっとなあ、というかん
じである。


私は特にスター・ウォーズのファンというわけではなかった。1作目は封
切りで観てそれなりに感心もしたが、2作目、3作目がいつ公開されたの
やら記憶にないし観に行きもしなかった。3作目をその後、友達がビデオ
で観ているのを横からちらちら観てた程度である。

でも去年3作品が再上映された時、2作目(帝国の逆襲)は全然みたこと
がないので、とりあえず観にいってみた。

・・びっくりした。面白いのである。無茶苦茶面白い。

えらい、こっちゃ。もしかして私はこれまでえらい失礼を(映画に対して)
していたのではないかとあわてて3作目(ジェダイの復讐)を観にいった。
1作目もあらためて観た。でも、ううんというかんじであった。そりゃ、
面白い、面白いんだけど「帝国の逆襲」の面白さにはかなり及ばない様な
気がした。もちろん好みの問題なんだろうが私にとってスター・ウォーズ
は「帝国の逆襲」につきるというかんじである。映画全体をおおう暗い雰
囲気がなんともいえず好きだ。


まあそんなことで
『エピソード1』にそれほど期待はしていなかったが、SFXがどこまで
いっているのかは楽しみだった。なんせジョージ・ルーカスは技術の進歩
を待つということでスター・ウォーズの制作をストップしたというのだか
ら、その封印がとかれる今、どこまですごい映像ができてくるのかとくと
拝見いたしましょうというかんじだった。

が、特に感心しなかった。
(これはド素人の意見としてお見逃し下さい、見る人が見れば色々とすご
 いのかもしれません)

というか、前の三作ですでに技術的には十分すごい水準に達していたので
はないかという気がする。どこがどれほど進歩したんだか私には良く分か
らない。これなら別に封印することもなかったんじゃないかという気がし
たが。

それから私はこの映画のストーリーはどうでもいいのだが(ファンの方、
すみません)ストーリに関する地味な場面(会議とか)が割と多かったの
も不満だった。

でも一番の不満は子供を主役格にしたことである。ストーリー上、仕方な
いのかもしれないが。

こういう映画にあんまり子供を出してはいけない気がする。それは子供の
演技力うんぬん以前の問題である。大人がおおまじめにチャンバラなどを
やってるからこそいいのだ(リーアム・ニーソンは結構かっこ良かった)
子供が出てくると何か遊園地のアトラクションに乗ってはしゃいでるだけ
の様にしか見えなくてすっかりしらけてしまうのだ。もちろん私の個人的
感想だが(いまさら、そんなこと断わらなくてもいいか)

まあ、エピソード2では子供も大きくなることだろうからそれ程期待せず
に待つことにしよう。

それからジョージ・ルーカスはプロデユーサーだけにして監督はやらない
方がいいような気がする。エピソード2は是非、「帝国の逆襲」の監督に
やって頂きたいと思ってちょっと調べてみたらこのアービン・カーシュナー
という監督は1923年生まれですね。こりゃご健在だとしてもえらい年
ですね。 ちょっと無理そう。

じゃあ誰がいいかな。リドリー・スコットなんてどう?












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『ホーホケキョ となりの山田くん』
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これは色んな意味でなんとも困った映画である。
まず、ほめるべきかけなすべきかで迷う。

でもまずほめてみようか。

絵そのものは素晴しいと思う。
「水彩画のような」と形容されている絵を基調として時にさらに枯れて山
水画の様になったり急にリアリスティックな絵になったり色んなスタイル
が出てくる。斬新である。
確かに一見金がかかってなさそうだが『もののけ姫』を凌ぐ制作費という
からやっぱりかかるんだな。こういうのやろうとすると。
なかなか贅沢である。面白い。

それから原作の4コマ漫画を忠実にアニメ化している部分については文句
なしに面白かった。4コマをアニメにしたところでと思われるかもしれな
いがこれが意外と面白いのだ。もちろんもとの漫画が面白いということが
大きいけど。

矢野顕子の音楽も良いと思う。


さて、ほめられるのはここまでで

まず、お父さんの声が納得いかない。あれはどう聞いてもおとっつあんの
声ではない気がする。あれはもっと若い兄ちゃんの声だ。
朝丘雪路のお母さんをはじめその他の声についてはかなりよかったと思う
が。


でもそれよりもなによりも問題は4コマ漫画以外のストーリー性のある部
分である。これが全くいただけない。
監督の高畑氏が脚本も担当しているので彼が作ったものだと思うがまるで
面白くない。

いや、面白くないだけならまだ我慢もしよう。この映画には他にいいとこ
ろがあるのだから。
でも我慢ならないのは全体にものすごく説教臭いことである。
いや、説教臭いどころではない。実際に説教されてしまうのである。

ミヤコ蝶々のナレーションで(ですよね)
「夫婦っちゅうもんは、ともに手をとりあって人生の荒波をのりきって
 いくもんでっせ。子供はなるべく早く作りなはれ」等々
こんこんと説教されてしまう。

そんな古くさい結婚式のスピーチやあるまいしという感じだがそれを昔の
結婚式でのあるばあさまのスピーチという形できかされるのだからたまら
ない。

そりゃ、そういう昔ながらの考え方も全然悪くはない。多分そこには多く
の真理が含まれていることであろう。

でも、良きにつけ悪きにつけ現代の価値観はすでにもっと多様化してしま
っている。結婚しない生き方を選ぶ人もいる。結婚しても子供を作らない
ことを選ぶ夫婦だっている。もちろんゲイの人だっている。

そういう時代にこんこんと保守的な価値観を説教されてもなんだかなあと
いうかんじである。ましてやお金を払って楽しみにくるつもりで観る映画
でそんな説教を聞かされるのは勘弁して欲しい。

もしかしてこれは単に高畑氏が書いたというわけではなく、映画に出資し
ている日テレなりなんなりの意向があるんだろうか。
「日の丸・君が代」の法制化といったウルトラ保守的な流れに関係あるの
だろうか。世の中を戦前に戻してしまいたいと思っている人々がいるのだ
ろうか。

かんぐりすぎだろうか。




そもそも、いしいひさいちの漫画というのはこんなにウエットで説教臭く
はない。むしろ、その全く逆である。
とてもドライでシニカルで時にはブラック・ユーモアに近いものがある。

私は昔からいしいひさいち氏のファンで昔、サイン会に行ったこともある。
今、あらためてその時のサイン本をとりだしてみる。

本は『バイトくん全集1 屋根の上の午睡』である。
(ところでその後この全集の2以下はでたのだろうか 私はみたおぼえが
 ないが)

日付は昭和59年(=1984年ですね)6月24日とある。
場所は大阪府堺市にある漫画専門書店である。とても小さな店だ。
この店で「いしいひさいち氏のサイン会 やります」というはり紙をみた
時はうそだろと思った。多分、個人的なつながりがあって引き受けられた
のだと思う。
もちろん、店の中にサイン会をするようなスペースはなくサイン会は店の
前に机をだして行われた。
サインとともにバイト君の顔も描いて下さった。

いしいひさいち氏は顔写真も公開していないしマスコミに顔をだすことも
まずない。プライバシーがなくなったりつまらない事にまきこまれたりす
るのが嫌だからではないかとお察しする。 この映画に関してはきっと色
々とつまらないことにまきこまれたのではないかと思うとお気の毒である。
まあ、想像でものを言ってはいけないが。

サイン会の時にお顔を拝見した印象ではとても控えめで人前に出るのは苦
手な人なんだろうなと思った。村上龍氏の大体反対である(いえ、私は別
に村上龍氏を嫌っているわけではありませんが)

あまり印象でものを言ってはいけないが。  


この映画が4コマ漫画の部分を除いてはいしいひさいち氏の世界とはかけ
離れたものになってしまったことは残念である。

私の夢としては是非、次回はいしいひさいちの漫画を忠実にアニメ化した
ものだけで一本作っていただきたいと思う。『山田くん』にかぎらず
『バイトくん』や『タブチくん』や『ヒロオカ文豪』等々にも出ていただ
いてベスト・オブ・いしいひさいちという形で。(そういやタブチくんの
アニメ化はされたことがあるけどひどいもんでしたね)

絵はもちろん今回の延長でスタジオ・ジブリにやってもらいたい。絶対に
面白いものが出来るはずだ。


でも、どうもこの映画は大ゴケとなるであろうから、間違ってもそんな企
画は実現しないだろうな。

残念である。原作に忠実にさえやればこの映画は傑作となり得るものだっ
たと思うだけに本当に残念である。
まあ、そうしたところで大ヒットしたかどうかは分かりませんが。

一体、何がヒットするんでしょうね。世の中。それが分かりゃ誰も苦労し
ないでしょうが。




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