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趣味の日記



2000/07/01(土)



  公開日の初日の初回に『サイダー・ハウス・ルール』を観てきた。

  いやあ、良かった・・と書ければいいのだが「うーむ」という感じだ
 った。

  これが、アーヴィング自身が脚本を手掛けたのでなければ、「あの原
 作にこの脚本はないだろう」と文句を言うところである。でも原作者な
 んだしなあ。

  全体のストーリーは、かなり変えられている。物語全体の時間のスパ
 ンも相当短くなっている。ホーマーの子供も登場しない。メロニーも出
 てこない。(オリーブというのがメロニーのかわりなんだろうか。でも、
 あれじゃ登場する意味もないと思うが)よくまあ、ここまで思い切った
 ものだという気もする。もし、他人がこの脚本を書いたらアーヴィング
 は絶対、怒ると思うけどな。これで脚本賞(アカデミー賞)というのも
 疑問だ。アカデミー会員も、大作家には甘いのだろうか。

  映像はさすがに美しかった。役者はあまり気にいらない。

 この映画のHPをみるとプロデューサーは
 「映画の観客が小説の半分しか感動できないとしても、それで十分だ」
 と言っているそうだが、そりゃ、あんまりだ。原作のファンで期待して
 映画を観にきた人の立場はどうなるのだ。小説とは違う価値を提示でき
 ないのだったら、映画を作る意味なんてないと思う。

  でも、これを観るとアーヴィングの小説は実はあんまり映画化に向い
 ていないんじゃないかという気がしてきた。

  アーヴィングの小説はもともと映画的な雰囲気を持っている。読んで
 いる人の中に自然と映像が生まれてくる様なところがある。でもだから
 こそかえって、映画化が難しいのかもしれない。小説の通り、ほとんど
 省略せずに映画にしようとすれば、とんでもない長さになる。それにど
 んなにうまく映像化できたとしても、それは小説の読者が自分の中で作
 る映像とは一致しない。

  じっくりと長いスパンで各人の人生を描いている原作とこの映画を比
 べるとどうしても、うすっぺらな印象しか残らない。これで、一体どこ
 に感動できると言うのだ。いかん、だんだん口が悪くなってきた。

  長い時間のできごとを、じっくり描く映画というのはなかなか難しい
 ものかもしれない。映画はどちらかと言うと、ロミオとジュリエットじ
 ゃないけど短期間に起こった出来事の方が得意だろう。

  スピルバーグが初めて監督した『激突』は、運転手の顔が見えない不
 気味なタンクローリーに延々と追い回されるというだけの作品だが、こ
 れがなかなか見せた(スピルバーグは基本的には嫌いだが)。この、原
 作の小説も読んで、それはそれで良かったのだが、こういうものだと映
 画化する価値が十分にあると思う。

  『サーカスの息子』もアーヴィング自身の脚本で映画化がすすめられ
 ているらしいが、もうあまり過大な期待はするまい。公開されたら、や
 っぱり観に行ってしまうだろうが。


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  6月の末に『未亡人の一年』の翻訳がでた。6月末を「春」というか
 どうかは微妙なところだが(2000年春、刊行予定と宣伝されていた)
 これで、ほんとにそろうのかと危ぶまれていた新潮社の「ジョン・アー
 ヴィング・コレクション」はひとまず、完結したわけだ。まずはめでた
 い。

  でもこれがでるのを、待ちきれずに今は『ウオーターメソッドマン』
 にとりかかってしまっている。なんとなく読みにくそうな印象をもって
 いて今まで、手をつけていなかったが、そんなこともなく読み進んでい
 る。まだ、しばらくアーヴィングづけの日々が続く。




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