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趣味の日記



一杯のかけそば


2007/3/1(木)


先日、大阪の実家に帰った際に長年の友人である、カイガラくん
(自称)と会い、久々に一緒にスタジオに入って、セッションを
楽しんだ。

4年ほど前の一時期:日韓ワールドカップで国中が騒いでいた頃
:カイガラくんは東京にいて住所も私の家から比較的近かった。
大体2週間に1回のペースで東中野にあるスタジオに入り二人で
セッションをしていた(その後は決まって飲んでいた)。オリジ
ナルはやらず、邦楽もやらず、大体は古い渋めのロックのカバー
をしていた。

私たち二人の音楽の趣味は根本的には異なるが、重なっている部
分もある。問題は、カイガラくんがやりたいのは、弾き語りであ
り、私がやりたいのはリード・ギターを弾くことであった点だろ
う。カイガラくんの方が折れてくれた事もあったし、ボブ・ディ
ランの曲を無理矢理なアレンジでやった事もあった。でも考えて
みれば、大体、私がやりたい曲をやらせてもらっていた様な気が
する(Led Zeppelinだけは頑として拒否されたが)。自分で言
うのもなんだが、勝手なやつである。

で大阪に帰った時の話。

最初は大阪で会った。次の日、カイガラくんは(一人で)京都の
スタジオに行く予定だと言う。毎週スタジオに行くことを自らに
課してるそうだ。自ら物事を決め、それを実行していくタイプな
のだ。私も自ら物事を決めるという点では一緒だが、それを実行
するかどうかは分からないという点で大きな隔たりがある。

邪魔しないから、スタジオに遊びに行っていいかと頼んだらOKし
てくれたので、京都のスタジオに行かせてもらう。私用にギター
も持ってきてくれた。カイガラくんとしては、スタジオ予約3時
間のうち、1時間くらい私と遊んで、残りの時間を自分の歌の録
音に当てる予定だったらしい。しかし、久々に合わせてみると面
白かったので、結局ほとんど、まるまる3時間二人で遊んだ。簡
単な録音機材で(本当にシンプルな機材だが音は優秀、でもカイ
ガラくんは本気で録音する時はもっとすごい機材を使うらしい)
少し、録音もした。

いやあ、本当に楽しかった。ギターを弾くのさえ実に久しぶりだ
った。音楽というのは本当にいいなと思った。音楽とは文字通り、
音で楽しみことだ。別にプロを目指しているわけではないから、
楽しければそれでいいのだ。ちなみに私は人前で(仲間うちなら
いいけど、ちょっとあらたまった場所で)演奏するのは大嫌いだ。
変わり者だろうか?

あまりにも楽しかったので数日後、次の週末もう一回スタジオで
合わせてもう何曲か録音したいのだがとカイガラくんに電話した。
親切なカイガラくんはこれも承諾してくれた。再度、スタジオへ
行く日までの数日間、私は久々に、ややまじめにギターの練習を
した。実家には大昔に買った安物のストラトの
コピーモデルが置きっぱなしになっている。アンプはない。アン
プ無しでエレクトリック・ギターを弾くのは実につまらんがまあ、
仕方ない。金もないことだし。

(どうでもいい話だが、わたしはエレキギターという言い方には
どうしても抵抗がある。加山雄三じゃあるまいし。村上春樹氏は
小説の中で電気ギターと書いていた。正しいかもしれないがそこ
までも割り切れない気もする。慣れの問題だろうが)


約束の日、私はこの安物のストラトのコピーモデルを持って、京
都へ出かけた。ギターはカイガラくんが用意してくれるから持っ
ていかなくても良かったのだが、えせストラトのアームをジミヘ
ンの曲で使いたかったから。

さて、スタジオに入ってからが大変である。昔、やった曲を思い
出しては練習し、録音して・・の繰り返し。結局、以下の6曲を
録音した。どうでもいい情報ですが、録音日は2007年2月18日で
す。

Little Wing(Jimi Hendrix)
Knockin' on Heaven's Door (Bob Dylan)
I Shall be Released (Bob Dylan)
Wild Horses (The Rolling Stones)
While My Guitar Gently Weeps (The Beatles)
Here Comes the Sun (The Beatles)

ボブ・ディランなんかは、割とあっさり終わったが(何だかもう
これ以上、やりようがないという感じで・・ボブ・ディランとい
うのはそういう人である←ほんまかいな)後の曲は結構大変だっ
た。おまけに、コピー・ストラトはちょっと弾いただけでチュー
ニンングが狂って使いものにならず、録り直したり。

3時間の予定がそれでは足らず、4時間に延長してびっしりやっ
た。(後述するが、びっしりと言っても私だけちょっと昼食休憩
した)最後に 'Here Comes the Sun' のアコースティック・
バージョン(Vocalとギターの完全分業制)を録ろうとしたが、
私がギターをミスったところで時間切れ。

終わったら、くたくただった。でも充実感があった。プロのミュ
ージシャンなら「よう働いた」ということになるのだろうが、
我々はプロではないので、「よう遊んだ」というとこだろうか。
でも遊んだというのともちょっと感じが違うな。まあ、とにかく
満足だった。

この時の録音の一部をカイガラくんが編集しネットに公開してく
れたので、ここで紹介。しかし、本当に器用な人だ。
カイガラくんの音楽室

'Wild Horses' は私も納得の出来だが、'Little Wind' と
 'Knockin' on Heaven's Door' に関しては、チューニング
の狂った、えせストラトで弾いているので、すごく気持ち悪い。
どうか、ご辛抱を。カイガラくんによると、ほとんどのテイクが
音割れしていて使えなかったそうだ。私はそうも思わなかったけ
ど(録音を全部、CD-Rに焼いてもらって聴いたのだ)音に厳しい
人なのだろう。

私はエレクトリック・ギターを弾いているだけで、歌もアコギも
カイガラくん。'Knockin' on Heaven's Door' のハーモニ
カもカイガラくん。このハーモニカが実に味がある。うまいのか
下手なのかよく分からないが、とにかく味がある。まさにボブ・
ディランみたいなハーモニカ。


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ここから話は変わって、そのスタジオのご主人の話。
そのスタジオは京都、阪急桂駅の近くの・・うどん屋にあった。。
というのは嘘だが、うどん屋のわきの階段から登った二階にあっ
たのだ。このうどん屋のご主人は、音楽好きでスタジオまで作っ
てしまったのだが、それだけでは食っていけずうどん屋もやって
いるらしい。

そのご主人とカイガラくんが「もうかりまっか?」みたいな話を
(カイガラくんはそんな下品な言い方はしないが)していた。

「いやー、あかんな。そりゃスタジオから収入はあるけど、最初
作る時に億単位の金をかけてるしな。補助金が降りればもう少し
楽になるんやけど」(注:台詞は大雑把な記憶で書いてます、正
確ではありません)

補助金? なんでスタジオに補助金がおりるんだ?

話を聞いてみると、このご主人は長年、ボランティアで子供たち
などに音楽を教えていたらしい。そのNPO活動(・・という表現
でいいのかな)に対し、補助金がおりるかもしれないということ
だそうだ。

色々と有名人の知り合いも多いらしい。
「クロード・チアリとも知り合いやで。あの人が昔やってたバ
ンドはえらい人気でビートルズが前座を務めたこともあんねんで」

あとで、調べたらそれは「レ・シャンピオンズ」というバンドら
しい。「ビートルズの前座」ではなく、「ビートルズが前座をし
た」のである。へえーとか思って聞いていると

「それから、ほれ、あのめくらの・・めくらっちゅうたらあかん
けど、あの目の不自由な・・」
「長谷川きよしですか?」
「いや、そやなくてあの黒人の・・」
「もしかして、スティーヴィー・ワンダー?」
「そや、そいつや」

ええー。おおものすぎるーー

それから、ご主人はやおら携帯を取り出す。
「えっ、もしかしてこれから、Hi,  Stevie とか電話するんで
すか?」と茶化すがご主人は携帯の写真を見せたかったようである。

「ほら、これがスティーヴィー・ワンダーやろ。ここにおるのが
知事でこれがわしや」ほんとだ。。
「これは、小泉や」
小泉前首相と一緒に写っている写真である。もう口あんぐりであ
る。

「そのうち、勲一等くらいもらえるんじゃないですか?」
「いや、今は勲一等とかそういう勲章はなくなってんね」
そうなんや。

「ベンチャーズがお好きとか?」(これはカイガラくんから、ち
らっと聞いた情報)

「いや、そんなにベンチャーズが好きというわけやない。人に
教える時、ベンチャーズやと、やりやすいいうだけや」

「じゃあ、何が一番好きです?」

「うーん、やっぱりビートルズかな」

「あの。。握手してくれますか」

握手してもらう。

「で、次はやっぱりレッド・ツェッペリンですよね?」

「うーん、まあそやな」(顔は明らかに否定していた)

まあそんな会話をしてびっくりしたのが一回目。



次に行った時、腹ごしらえにスタジオの待ち合わせ室
でパンを食べようとしていたら(スタジオ内は飲食禁
止なのだ)上にあがってきた、ご主人と会う。

「あっ、こんにちは。そういや下はうどん屋でしたね。
こんなもん食べるよりうどん食べた方がいいかもしれ
ませんね」

「そりゃそや。うちのかけそば、うまいでえ。何なら、
出前したろか」

「そうでっか、ほな一杯のかけそば、いただきましょか」

「よっしゃ、ほなすぐ作って持ってきたるさかい待っててな」
と主人は去って行った。

しかし、考えてみれば出前っちゅうても一階から二階に持っ
てあがるだけである。こんなとこでぼけっと待ってるのも
あほらしいので下の店に降りた。店の女の子と少し話をする。

「お客さんは、京都の方ですか?」

「いや、住まいは東京で今は大阪の実家に帰省中なんやけど。。
そういや、わし、関西に来たらうどん食お思ててん。なんで、
そば食わなあかんねん。ちょっと、マスターよんでんか」
(字面だけじゃ伝わらないかもしれないが、これは関西的冗
談のノリである)

で、本当にマスター(ご主人)が来る。

店の女の子「このお客さんが、なんでうどんやなくてそば食
      べさせんねんと怒ってはりますけど」

マスター 「そりゃ、お客さんが、一杯のかけそばが食べた
      いゆうてんねんさかい、一杯のかけそばを出さ
      んと失礼やろ」

私    「はい、そのとおりです。すみませんでした」

かけそば到着。いただく。

そして、お約束の関西風お会計。
「400万円でんな」
「400万円でっか。えらい安いでんな。ほな、1000万円から」
「へえ、600万円のお返し。おおきに」

実際、400万円・・じゃないや。。400円のかけそばは
うまかった。東京で400円ではなかなかこのレベルのそば
は食べられないだろう。原価からいっても、うどんよりそば
の方が高いらしいし。

カイガラくんに、この話をする。クールなカイガラくんは言
い放つ。

「そこで、4億円とか言われたらどうします?」

「そりゃ、一生懸命単位を合わせて、じゃあ10億円からとか
言うやろけど、とっさに言われたら対応でけへんかもしれん
な。大体、まだ生まれてから一回もそんな関西人に会ったこ
とないで。もしおったら学会に報告せんとあかんな」

いや、関西とは実にアホらしいとこである。しかし、そのア
ホらしさがやっぱり好きだ。なんだか、大阪に帰りたくなっ
てきたなあ。さて、どうしたものか。。

...............