シタール 2013/12/28(土) 一念発起して、シタールの弦の交換とチューニングに挑む。 シタールを持ってはいるものの、優にここ10年以上、ほとんど弾くこともなく放置してきた。 何故、こんなに長く放置してきたのか。とにかく弦の交換とチューニングが大変なせいである。シタールに比べ たら12弦ギター(これも一応、持ってます)の弦交換とチューニングなんて楽勝とさえ言える。 では何故、一念発起したのか。 このところ、ベースにウクレレ(テナーサイズ)と立て続けに楽器を買ってしまった。いずれも1万円もしない 中古品だが。特にウクレレはお気に入りで良く弾いている。コードもだいぶ覚えた。 すると夢にシタールが、でてきた。シタールが「私のことも忘れないで下さい」と訴えているとしか思えなかっ た。まあ深層心理でずっと気になっていたということなのかもしれんが。 というわけで一念発起。 シタールは上に7本、下に共鳴減が11本ある。これを全部、替えると思うだけでくらくらしてくる。交換する弦 自体は、昔、インドに行った時にかなりたくさん買ってあるので問題ないのだが、シタールはあくまでも民族楽 器である。エレキギターみたいに手軽に弦が交換できる様にはできていない。そもそもギターの様に、1本ずつ パックして、それが何番目の弦か表示してくれるなんてこともないので、どれがどの弦なのかすら良く分からな い。適当に見当をつけて張るしかない。 とりあえず、切れてしまっているところ以外の共鳴弦はそのままにすることにして、上の7本の弦を何とか張り 替えてみる。 シタールのチューニングは、西洋音楽で言う、オープンCチューニングみたいなものだ。主にメロディーを弾く1 番目の弦だけはFだが、それ以外の弦はCかGにあわせる。 チューニングの基準はCの音(インド音楽で言うとSaの音)ということになるのだが、実際にはC#ぐらいの高さ に合わせることが多い。最初にそれを知った時にはびっくりした。何よりもびっくりしたのは、半音上げるだけ でシタールが見違える様に輝かしい音を出したことだ。ギターなんかでは半音あげたからと言ってここまで音色 がかわることはない。実に不思議な楽器だ。これもインドの神秘なのか。 チューニングするといきなり、2番目の弦が切れたりしたが(太すぎる弦を張ってしまったのかもしれない)、 まあ何とか上の弦をチューニングする。 ここまででもかなり苦労し、相当な時間を費やしたが更に問題なのは11本の共鳴弦だ。共鳴弦のチューニングは 本来、曲のラーガ(音階、スケールみたいなものです)に合わせて 順にしていくのだがこれが実に面倒くさい。 しかし、チューニングがばっちり決まると、あのシタール独特の実に素晴らしい音色を発する。シタールの醍 醐味とも言える。 共鳴弦をじゃらんと直接弾くこともある。そのためにシタール奏者は右手の小指の爪だけをのばす。しかし、私 のようなおっさんが右手の小指の爪だけのばしていたら、世間からするとかなり気持ち悪いだろうな。まさか、 「ああ、あの人はシタールを弾くんだな」なんて思ってはもらえないだろうし。インドならともかく。 面倒なので替えずに済ませようと思った共鳴弦だが、チューニングを始めると、危惧していた通り、次々と切れ ていく。後から気づいたら、本来より1音半くらい高く合わせようとしていた。まあそうでなくとも長年、放置 してきたから無理ないことなのだが。 しかし、共鳴弦を張るのは上の弦を張るのよりも更に、格段に面倒くさい。フレットの下に弦をくぐらせ、穴に 入れ、それをカギ状にした針金かなんかで引っ掛けて引っぱりだし…といった具合なのだ。こちらのページでか なり親切に説明してくれています。ほとんど誰も興味ないと思うけど。 シタールの共鳴弦の替え方 そんなこんなで、1日近くを費やしたのに完全に交換とチューニングを終えることが出来なかった。しかしまあ チューニングが進むとシタールは久々にその美しい音色を取戻してきてくれた。 よくこんな楽器を考えたもんだと思う。さすがはインド人だ。 すごい楽器だと思う。 素晴らしい楽器だと思う。 個人的には世界一の楽器だと思う。 しかしまあ、そうおいそれとは楽しませてくれない。 弦の交換とチューニングだけでもこれだけ大変なのだが、本格的に弾くためには、ものすごい練習量とインド音 楽の深い知識が必要だ。インド音楽というのがまた、独特で難しい音楽なのだ。もちろん私の手に負えるもので はない。 シタールの対極にあるような楽器がウクレレだ。 なにせ、小さくて軽い。持ち運びに便利だし、弦は4本しかない。実に気軽に弾けるが、そのくせ、奥は深い。 視点を変えれば、この楽器こそ世界一だと言えるかもしれない。 ジョージ・ハリスンは若いころシタールに熱中したが、年をとってからのお気に入りはウクレレだった。 その心情は何となく理解できる。音楽のど素人の私が言うのも甚だ、おこがましいものがあるが私もジョージと 同じ道を歩もうとしていた。 しかしまあ、夢に出てこられちゃあなあ…